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風邪は汗かいて治そう

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免疫力アップさせる「発熱」

 足湯やショウガ湯で温かく

 風邪などの初期にはよく熱が出る。この発熱には、体の自己治癒力を引き出す大切な役割があることが、最近の医学研究で明らかになってきた。風邪を悪化させない養生の工夫と合わせて、専門家に聞いた。(編集委員・小出重幸)

 ひきはじめに葛根湯

 「子どもなど家族が風邪をひいたときは、まず葛根湯(かっこんとう)などを飲ませ、汗をかかせます」

 4歳と7歳の子どもを育てる東京都目黒区の主婦、Yさんは子どものころに漢方薬を使いながらぜんそくを改善させた体験から、家族が病気になった際は、近所の医師や薬剤師と相談しながら漢方薬を使っている。

 千葉大医学部教授(和漢診療学)のTさんは「発熱には、身体が免疫という防御機構を始動させるための役割があります」と説明する。

 風邪の初期には、寒気を感じたり、風に当たると悪寒がしたり、首筋など関節がこわばったりなどの症状がよくみられる。「これらは、ウイルスなどの病原体が体内で増殖を始めたサイン。免疫細胞がこれをキャッチし、体温を上げる指示が出されます。そして発熱に伴ってガンマ・インターフェロンなどの細胞性免疫機能が働き出し、ウイルスを駆逐する態勢が整う。だから発熱も大切な治療プロセスなのです」とTさんは言う。

 そして発熱時には、適度な汗をかくことが大切だという。葛根湯などには発熱、発汗を促す働きがある。「発汗すれば体温が上がりすぎないよう調節できます。これでウイルスと戦う準備が整い、後は自分の免疫力が病気を治すのです」

 消化のいいもの食べて

 汗をかくと、そのまま治ってしまうケースもあるが、熱が残ったり、食欲が落ちたりするケースも多い。目黒区内の薬局で、Yさんの相談相手となっている昭和大薬学部講師のNさんは「その段階では小柴胡湯(しょうさいことう)を処方するなど、症状に応じた方剤が用意されています。でも何よりの治療法は、消化を助け、体を温めることです」と指南する。

 のどの痛みにナシの汁

 漢方医学は、季節や症状に応じた食事や生活の工夫を「養生法」として伝えている。寒気には熱いショウガ湯などを、のどの違和感や痛みがある時は大根のおろし汁、ナシの果汁などを飲む。

 「風邪が長引いたり、熱さと寒気を交互に感じる時は、ふろふき大根にショウガを添えたり、根菜類を温かく炊いたもの、あるいは鍋などの献立がお勧め。のどの痛みがある時はマスクをして寝ることも有効です」。Nさんは、養生は自己回復力を最大限に活用する知恵だという。

 Yさんは、家族の病気や症状を「からだのノート」に記録している。

 「のどから風邪にかかりやすい子、熱を出しやすい子など、それぞれ体質があります。風邪をひきそうだと思ったら、足を湯に浸して温める『足湯』をさせて汗をかかせたり、肩甲骨の間をカイロで温めたり、風邪も早めに手当てすれば、軽く治してしまうことができます」と話している。

2006年2月18日  読売新聞)